なちゅれ・小笠原旅行紀


9月17日
きり丸ツアー・後半

太陽もちょうど真上にご到着の頃、スタンリー氏操るきり丸は、南島の通称サメ湾に到着。
ここはネムリブカというおとなしいサメがたくさんいて、 一緒に泳げるので有名です。このサメはどのくらいおとなしいかというと、触っても なにしても動じないので、二匹のシッポを縛ろうとしたヤツがいて、そいつはついに 噛まれたらしいんですが、そんなことやってみたくなるくらいおとなしいらしいんですね。
ここから岩場を登って、絵葉書でおなじみの場所へ。南島といえばこのスポット。 それだけで通じちゃうので、そういえば名前を知らないのですが、メガネ岩のあるちょ〜ドきれいな 白砂の入り江です。
ガイドの人に先導してもらって、そのすぐ脇で島の説明と一通りの注意点を聞き、昼食兼 自由時間。のんびり食べる人、すぐに泳ぐ人、サメ湾に戻って泳ぐ人等々、それぞれに 気ままな時間を過ごします。
私は、持参したパンをくわえながら、デジカメ片手にあちこち探索をはじめました。


サメ湾。海の色が違うっしょ?

岩場から上陸。

白砂広がる中央部へ

絵葉書でおなじみのこの光景。絶景。

うろうろすると、いろんなものが見つかります。
まずは、南島名物のヒロベソカタマイマイ。2000年ほど前に絶滅した 貝の半化石ですが、過去3回来ていて、恥ずかしながらこんなに大群落 になっているとはついぞ知りませんでした。しかしガイドの人の話では 持ち去る人がいてかなり減ったとか。ちなみに、天然記念物なので持ち出し厳禁です。
少し行くと、雨水がたまったような浅い池があって、そのまわりには鳥が 目立ちました。南島では岸壁で繁殖しているカツオドリが有名ですが、今回池の まわりでみられたのは、アマサギ、キアシシギ、エリマキシギなど。 小型のシギもいたのですが、予想もしてなかったので双眼鏡がなく、 正体は突き詰められませんでした。写真だと黒点なもので……。
そして、みんなの泳ぐ入り江では、アオウミガメの赤ちゃんが何匹か泳いでいました。 彼らは結構波にのって座礁したりもするらしく、よくみるとあちこちに干物が 出来ていたりしました。親亀への道のりは長く険しいもののようです。


泳いでいたアオウミガメの子供

池にいたエリマキシギ

一面に広がるヒロベソカタマイマイ

力尽きてもなおどこかを目指したのか

炎天下の中、あちこちをにらみながら歩きまわる私のような物好きは少なく、 ほとんどの人は岩陰でお昼を食べ、すぐに入り江で泳いでいました。
遠くから見ると、絵葉書そのもの。近づくと、手を入れたら染まってしまうような エメラルドグリーン。その景色の一部に自分がはいっているというのは、 なんだかくすぐったいような、なんとも不思議な感覚のようです。
泳ぐ人々を尻目に私はなおも歩きまわりましたが、とっても狭い島で周辺は岩場 なので、あっという間に見るべきところがなくなりました。
岩場の上に行くとガイドに告げると、それはできなくなったとのこと。 実は最近石原都知事が、エクアドルのガラパゴス諸島での制度などを見習って、 エコツーリズムを推進して新たに規制をたくさん設けたので、立ち入り禁止個所が多い らしいんです。
「南島はあの人のお気に入りだからね、あんまし他の人に入ってほしくないんじゃない? 入島人数の規制とか、ガイドつけろとか、小さな案内の船だとツライ条件がたくさん あるのよ。
空港もあの人がきて、完全に廃止になったしね。こんなところ船でじっくり来て こそいいんだってね。でも自分はいつも自衛隊の飛行機で来るんだよね。」
などと、ガイドの人にいろんな裏話兼グチを聞いたりもしました。
聞くと、一箇所だけ登っていい岩場があるので案内しようとのこと。ありがたく お言葉に甘えることにしました。


エメラルド色の水に見とれてみる

絵葉書の中で泳ぐ。不思議な感覚

けっこう急な岩場をガサガサとのぼってみると、こいつがかなりの絶景。 途中で何度もため息ついて、ついつい何度もデジカメ構えたりしつつ、頂上へ。
これが、父島と南島の間の海が一望できて、言葉にならない光景です。お伝えするには、 超ワイドのパノラマで撮影して、映画館のスクリーンいっぱいに投影せねばなりませんが、 まあ実によいもんです。現物見てくださいな。超オススメ。
すぐ脇に、カツオドリの今年生まれの子供がいました。カツオドリは若い頃には一面真っ白な 綿毛に覆われていますが、こちらはまだ巣にはいるものの、親そっくりの姿になっていて、 間もなく巣立ちの様子です。
上まで上った物好き数名で各方面を見渡しながらため息をついていると、カツオドリが 何度もすぐ近くを飛びます。慌ててデジカメを構えなおし、何度もチャレンジして タイミングを練習しましたが、ついに「おし!バッチリのショットだ!」と思った瞬間に 電池切れ。予備の電池は岩場の下のカバンの中。世の中そんなモンです。


入り江の全景。ためいきでません?

今年生まれのカツオドリ。もうすぐ巣立ち

南島を後にして、一路マッコウクジラ探しに。
きり丸はグングンとすっ飛ばし、母島との中間近くまで移動しました。このあたりが メッカの様子。しかし、まわりにもご同業の船がいるものの、どれもこれもじっと 海面を見つめている様子。まだいないのかな?
「お〜い、どう?ダメ?あ、声も聞こえない?そっかぁ。」
スタンリー氏が近くの船と言葉を交わします。
「イルカがすごかったからね、こっちはダメじゃないかなぁ。」
常連氏の冷静なお言葉。そんな気もするけれど、でもやっぱり見たい。
みんながみんな四方八方をにらみつけ、しばし船の上を静かな緊張感が走ります。
舳先に陣取る私も、人一倍の勢いであたりの海面をにらみつけますが、なんの動きもなし。 船中にダメかなぁという雰囲気が広がった時、なにげなく船の真後ろを見た私の 視界に、何かが水を吹き上げるのが見えました。
「あれなんだ!?」
自分でも驚くほどの大声で後ろを指差すと、船中の人があわてて振り向きます。その瞬間、 ちょっと大きな影が、はるか後の海の中から飛びあがり、水しぶきをたて再び潜りました。
ウワァ〜ッという声が沸き上り、一気に活気付く船上。スタンリー氏もアクセル全開で船を走らせます
「でも小さいね。イルカの仲間かもしれないよ。」
ようやく近づくと、少し離れたところに黒い影が見えました。確かに小さい、マッコウ ではなさそうです。
数頭の群れがスウッと海中を移動し、時々背中が水面に見えます。
「コビレゴンドウだね。どちらかというとイルカに近い仲間だよ」
と、ちょいと違う影。常連さんとガイドさんが騒ぎ出しました。
「あれ、白っぽいよ。マダラ模様もある。この前いたアカボウクジラじゃないかな? とっても珍しいよ」
しばらくきり丸はそのクジラたちを追いかけますが、当然ながら追いかける船の上は 揺れに揺れ、素人ではクジラの模様まで見えたもんじゃありません。
「アカボウだね。すごく珍しいよ。小笠原にはあまりこない。まだ4回しかみたことないよ。」
船はしばらくアカボウクジラを追いかけましたが、さすがにイルカほどサービスはよくなく あまりしっかり見れないまま、やがて彼らはどこかに消えました。
私のデジカメは黒い点を撮影しただけですが、松井さんは見事に撮影成功。多分、すごく 貴重な写真ですよ。いいなぁ。


アカボウクジラ。信じる人には見える?

船底にあるのぞき窓を見てみる。

結局マッコウクジラは影も形も見えず、タイムアップ。
一路、兄島瀬戸の海中公園へ急ぎます。我々兄弟は、常連客氏らと共に、 波を突っ切り、勢いあまって時折浮き上がる舳先に座って、ジェットコースター ばりのスリルを楽しみます。
かつて、岩崎氏が名台詞を残した舞台。年月はたっても変わらない何かのようです。
そんなこんなで楽しんでいる間に海中公園へ。冗談みたいに澄み上がった海の中には、 こちらも冗談みたいにカラフルな魚たちが群泳しています。
午前中は全く泳がなかったので、ここだけはと勢い込んで飛びこみ、およいでみると ひさしぶりの海中公園は、以前と変わらずきわめて極楽状態。 しばしトランス状態に入りそうな勢いで、ガシガシと泳ぎまわりました。
きり丸から餌付けの籠がおろされ、魚たちがわっと集まります。ここのところきり丸が 名物にしているのにこの場所での「ウミヘビの餌付けショー」があり、見るほどに 数匹近づいてきて、魚に混じって餌を奪い合っていました。
そぉっと潜って近づくと、どうやら本当のウミヘビ(当然爬虫類です)ではなく、 アナゴの仲間のよう。アナゴの仲間には名前にウミヘビとつくものが多く、そこからの 誤解のようです。白地に黒い斑紋のこのアナゴ君、図鑑では名前がわかりませんでした。
息切れするほど泳ぎまくって、心地よい疲労感を感じつつ、制限時間いっぱいで船に 戻ります。
少しずつ陽射しがオレンジっぽくなるなか、キラキラと輝く水面を見ながら、再び舳先に 腰掛けて、港へと戻りました。おなか一杯、大満足のツアー。
サンキュー、スタンリー!!


海中公園の風景

エメラルド色に磨き上げられた空間

陸地に戻った我々は、船の揺れの余韻を楽しみつつ、今日もまた夕日を見に ウェザー・ステーションへ。
本日も人の大群でしたが、目の前に広がるのは清く正しい南の島の夕暮れでした。 ゆっくりと色合いを変えて、空中にまぶされた少し多めの雲を、一つ残らず 金色に塗りつぶし、きっちりと海のかなたへ沈んでゆく。
濃い一日の締めくくりにふさわしい、堂々たる夕日でした。
ちなみに、その展望台で私の耳が拾った、女子大生とおもわれる二人組の会話。
「むこうが南かな?だって夕日があそこに沈んだんだからあっちが西でしょ?」
「え〜、だって、西から昇ったお日様が東に沈むって歌があるじゃ〜ん?」
「あ、そっか。えっと、どっちだっけ?」
おいおい、マジっすか?日本の未来は大丈夫なのか?
そんな心配はさておき、壮大な夕日の余韻を記憶の中に転がしながら宿に戻って、昨日と同じ丸丈食堂で 晩飯をかっくらい、しばしの休憩。かなり時間がたっても、船上の余韻が体に居座りつづけます。
「兄貴ぃ、揺れとる?俺結構スゴイで。ほらほら、まっすぐ歩けへん」


夕日を見に集まる人々

南の島の清く正しい夕日

英雄はついに海の向こうに去った

ふとみあげると月明かり一つ

夜になっても興奮状態の続くバカが約一名、宿でじっとしてることが出来ず、 スクーターで夜の探検に出かけました。
ねらいはズバリ、オガサワラオオコウモリ。
どうもここ数年増えているそうで、亜熱帯植物園でオオコウモリを見るナイトツアーも ほとんど毎日やっている様子。
さっそく一路亜熱帯植物園に走りこみ、ヤシの木の回りに居座ります。
「今日がラストチャンスだし、絶対見てやる〜。ダメだったら毛布持ってもう一回来てやる。」
誰もいない虚空に向かって、猛々しく吼えたとたん、遠くに黒い影。
ザブトンが飛ぶような雰囲気で視界を横切った彼は、間違いなくオガサワラオオコウモリ。 感動のご対面です。しばらく待っていると、割と頻繁に姿を見ることが出来ました。
夢にまで見た風景を満喫していると、そのうちにナイトツアーの人々がザワザワとやってきて すぐ近くで解説をはじめてしました。参加者でもないものがいるのは、ちょっとはばかられる雰囲気 なので少し移動。するとまたそこにも別のナイトツアー。
しかも、どちらもなかなかコウモリが見れないようでそのあたりをウロウロします。最初に来た グループは、ついにみんなで寝転がって星座の解説をはじめました。移動するまで待とうかなぁと 思ったのですが、ついに根負けしてこちらが移動。
当然ながら写真でみなさんにお届けできるほどの幸運には恵まれませんでした。
その後、長谷のあたりでグリーンぺぺ探し。これも朝のうちに目星をつけていたあたりに 行ってみたところ、すでにナイトツアーの人がいて、小さなグリーンぺぺを参加者に見せて います。同様に混ざれる雰囲気ではなかったので、しばらく夜明け山で星を見て時間を つぶして待ち、再トライ。
彼らは既に去っていましたが、どこを見ていたかはついにわからず、 かなりねばったあとで、水路沿いに別のグリーンぺぺを発見し、ようやく目的を果たしました。 長時間露光で撮ってみましたが、これもサイズは小指のツメくらい。大きなグリーンぺぺは またの機会までおあずけですね。
その後、宿に戻って、松井さんと一緒にウェザーステーションを再訪。月と星を堪能し、 しばし撮影にもチャレンジました。結果は私のほうは全くペケ。
途中で小笠原名物オカヤドカリを拾ったので、宿に持ち帰って悟郎に見せてみました。感想は、
「ゴソゴソうるさい」


グリーンペペ。こちらも極小サイズ

今夜も月がきれい

その後、われら兄弟は青灯台で夜釣り。明日がおがまる出航とあって、各方面で さよなら大パーティーがひらかれていて、そこここの通りに酔っ払いが溢れ、 港もなかなかにぎやかで、ひっそり静かに星を見ながらの夜釣りとは、ちょいと 予定が違う雰囲気。
しばらくやってると同じ種類の魚が2匹連れたのですが、それが2匹とも針をおもくそ 飲みこんでいて、解体しなくては針がとれない状態。
なんだかものすごい不完全燃焼のまま、夜釣りを切り上げ、宿に戻って、カッターナイフで 魚を3枚におろします。
醤油もないので、そのままペロリ。味は、えっと、まあまあでしたかね。


連れた魚。キントキとかの仲間かな?

三枚に下ろした刺身。



9/18(前半)へ