なちゅれ・小笠原旅行紀

9月17日
きり丸ツアー・前半

朝一番のちょっと壮大な散歩から孵ると、宿の中ではゆっくりと一日が回り始めたあたりでした。 食パンとジャムの朝ご飯を大急ぎで食べて、わたわたと準備。
ちょっと、と言いながら電話をかけ始めた悟郎氏、
「あ、おはようございます。今日の実習なんですが、風邪がひどいので休みます。あ、けっこう熱が あって。あ、自宅ですか?ぶっ倒れてるから電話には出ないかもしれませんけど……」
電話の相手はここから北に1000km。さすがに肝っ玉がすわっていらっしゃる。
そんなこんなでドバタバと港にかけつけ、懐かしいきり丸に乗りこみました。


われらがきり丸U。現在の名は「ピンクドルフィン」

船の横に浮くカニの抜け殻にイカがかくれんぼ

今日のお客は26人とか。結構いっぱい

きり丸をあやつるスタンリー氏。ニヒルなおやじ

今日のコースは、(1)ドルフィンスイム、(2)南島観光、(3)マッコウクジラウォッチング、(4)南島瀬戸、 と盛りだくさん。かつてお世話になっていた頃は(1)→(2)→(4)というコースだったのでクジラが追加に なった形です。いやがおうにも期待が高まります。
港を離れ、波を切り裂きながら南島方面へ。
しばらく進むと、ほかにもイルカウォッチングの船がちらほら見えはじめました。よく見ると 船から何人か下りて泳いでいるようす。
「あ、イルカいるね。入る準備して」
船長の指示でみなさんは慌てて準備。私は今回はイルカとは泳がないつもりなので、舳先に移動して デジカメの準備をします。
残念ながら最初に出会ったイルカは、1匹だけのはぐれ野郎だったらしく、あまり遊んでもらえなかった ようでした。しかし、船場から見ていると、一匹のイルカを数十人が追いかけて行く姿というのは 例えようもなく滑稽なもの。デジカメを構えながら人目構わず大笑いしてしまいました。


海上をスッとばすきり丸。結構なスピード

島の岸壁は素敵な雰囲気を持っている

イルカが出た。「みなさん準備はいいですか?」

わらわら泳ぐ人々。イルカはとっくに潜っちゃった

一匹だけのイルカの相手はあきらめて、しばらくは別の群れを探して島の回りを うろうろ動き回ります。島育ちのスタンリー船長による名所解説を聞きながら ゆったりと海上をうろつく時間というのも、なかなかよいもの。
しばし、ゆったりと流れる時間と、素敵な景色に見入ります。
やがて我々は舳先に陣取り、ヘリに腰掛けて景色を眺めることにしました。 波を切る時の舳先の持ちあがる感覚。そして、目の前に次々と展開する素敵な光景。
かなりの常連らしい男性たちが「前来ないと損だよ〜」などと声をかけますが、 あまり前に来る人はいませんでした。
こんないい景色とイイ雰囲気が、目の前いっぱいパノラマで展開してる というのに、実にもったいない。まぁいいや、みんなの分まで楽しんじまえ。そんなことを考えながら ニンマリしていると、スタンリー船長から「イルカがいたよ。たくさんいる。準備して」との声。


南島周辺でのある光景。こんなのが常時展開します

景色に見とれる悟郎氏

やがて常連氏と並んで舳先を占領

ハートロック。なんとも不思議な岩でしょ?

みんなはわらわらと泳ぐ準備をし、私は舳先でデジカメを握り締めます。
「ハシナガイルカだ。一緒に泳いではくれないな。でもいってごらん。」
次々にみんなが飛び込みます。私は急にイルカの群れに近づいた影響で グワングワンと派手に揺れる舳先で悪戦苦闘。
と、イルカの群れがすぐそこに来たではないですか。同じく海中には入らなかった 常連客と一緒に大はしゃぎ。
「うわっ、スゴイ数いる。特等席っすね。でも写真はつらいなぁ」
船は揺れるし、相手はすばやいし、液晶でしか撮影できない私のデジカメには、 一面の海原は相手を補足しにくいという問題点もあります。どうしても フレームに入ってくれない。どうにもこうにも力量不足。
と、なんと、船に沿うように泳いでいるイルカが、あちこちでジャンプし始め たんです。
それも、ただジャンプするんじゃなく、空中に飛び上がってくるくるとひねりを 入れるという高度技術。まるでオリンピックの新体操選手のよう。 それが、船の右でも、左でも、次々と炸裂します。
ジャンプというよりは、海中からなにかが弾けて飛び出すような雰囲気。
優雅に舞うように、生命を謳歌するように、かれらのダンスはしばらく続き、こちらは 撮影も忘れて大感激。
「すげぇ!!!」
ふと我に帰り、あわててデジカメを握り締め、どちらで跳んでもよいように、舳先の甲板の 中央に仁王立ちし、せわしなく左右にカメラを振り回し始めました。
しかし、これが敗因でした。
スタンリー船長の声に反応して、泳ぎ組がすべて船に上がってきて、いっせいに舳先に集まり、 仁王立ちしている私の回りをぐるっと取り囲んでしまったんです。
ただでさえ撮影しにくい被写体なのに、カメラを向けるたびに他人の頭。むむぅ。
しかし、ハシナガイルカ君たちはかなり長い間遊んでくれ、つたない手腕にも、数枚の カットを押さえることが出来ました。
狂喜乱舞の時間はかれこれ20分近く続いたでしょうか。恥ずかしながらなんとかお見せできる のはこの6枚だけ。あとはブレブレ、ピンボケ、ポッチン、etc、etc


回転ジャンプ。横のにいちゃん、あんたジャマ

寄りそう二頭。これも他人の頭が

一番マシだったショット。とほほ。

水中を泳ぐ群れ

二頭が同時に舞い跳んだ瞬間

水中を泳ぐハシナガイルカ

かなり長い間彼らに見とれ、女性たちは黄色い声をあげ続け、 たくさんのカメラとビデオが彼らを追い、やがて、彼らが遠くに去 ってもしばらくはその興奮冷めやらず、船の上は不思議な熱気に つつまれていました。
しかし、どうもこの日はイルカのアタリ日だったようで、ほどなく 次はバンドウイルカの群れが近くに出現。
今度は遊んでくれる種類なのでほとんど全員が海に飛び込み、 私は再び舳先にかじりつきます。
後で聞いたところによると、泳いだ人はイルカとのコミュニケーションを それなりに楽しめたご様子でしたが、イルカを追ってはみんなを 飛びこませ、遠くなったら再びみんなを船に乗せて追っかけることを 繰り返すので、舳先はかなり派手な揺れが続き、私のデジカメでは、全くと いっていいほど撮影が出来ませんでした。
面白かったのは、大きなカンパチをくわえているイルカがいたこと。
くわえきれず、時折放しては、未練たらしくまたくわえるのですが、それを見て スタンリー船長、
「あれおいしそうだな。盗っちゃおう。落としたとこ狙って引き上げてよ」
スタッフの人が手鉤を持って舳先にスタンバイしましたが、そうは問屋が おろさず、ついに彼はカンパチをくわえたまま潜っていきました。


こちらはまだハシナガイルカ。ピンボケ

カンパチをくわえてたバンドウイルカ

水中を泳ぐ

背びれが見える……だけ。撮影はまるで失敗

イルカの群れはまだしばらくは遊んでくれそうでしたが、これ以上時間を つかうと、午後のマッコウクジラ探しが出来なくなるということで、 乗客一同協議の末、次の目的地南島へ出発。
まだまだ撮影できていなかった私と、イルカ大好きの常連客さんはしばし
「もったいない。こんなチャンスなのに、両方なんて贅沢だよ〜」
と舳先でしばしブーたれておりました。
しかし、きり丸の舳先で波のリズムを感じながら突き進む海原はなんとも 素晴らしいもの。けっこうなスピードですっ飛ばして、ほどなく南島に接近。
ここの湾の入り口は岩の隙間をすりぬけなくては行けないのですが、スタンリー船長は バツグンのテクであっというまに隙間を突破。見ている私の方が縮こまってしまいました。 そんなこんなで、なつかしの南島に上陸。ここでランチタイムとしゃれ込む わけです。




9/17(後半-A)へ