<3>小笠原・母島 続き |
さらに登っていくと、ケホシダ(左)も発見。バランスの取れたスタイルですな。
そう感心しつつ眼下をみわたすと、一面のマルハチの群落(右)に驚かされました。
いやはや、これは熱帯雨林に来た気分になれます。
この光景を見るだけで、汗まみれで登ってきた甲斐があったというもの。
さらにしばらく登ると、あっけなく山頂に着いてしまいました。
見渡す風景はきれいですが、右の写真を見ると風が相当強かったのがわかります?
もしかしたら山頂には吹上の虫が、というあまい予想はこれでオジャン。
しかし、嬉しかったのは、ここまでの所用時間が1時間なんです。
学生時代、友人と登った時は、2時間以上かけてヘロヘロバテバテで登ったあげく
山頂のベンチにぶっ倒れて、「背中から根が生えていくのが分かるぞ〜!」と
叫んだりしたのですが、近年の愚行で脚力がついたモンだと少しだけにんまり。
感慨に浸りつつ、下山道にはいると、あちこちに大満開のムニンネズミモチを発見。
こいつはなんか虫が来てるだろう、カミキリ類くらいは間違いなく、と
思いましたが、しばらく探せどもその姿は全くナシ。いやぁ、難しいモンだ。
道端の樹には、独特なスタイルのホソバクリハランが大量に着生していました。
みっしり茶色のソーラス(右)もついていて、なかなか色っぽい感じ。
なんか面白そうな実をつけている樹(左)もありましたが、こちらは名前がわからず。
そうこうするうちに、オオバシマムラサキ(右)が出現しましたが、予想外にも
まだ花芽なんかはまったくついていなくてガッカリしたり。
このあたりのハハジマノボタン(左)は、赤く紅葉した株がありました。なにゆえ?
懐かしい宿敵、ツルダコ(右)も一面に群生したりします。
昔々、一人で石門に入って迷って、このツルダコの猛烈なヤブこぎを延々と
やったという悲しい記憶がよみがえります。あの時は生還できてよかったなぁ〜(笑
やがて、まだ花芽でしたが、モクタチバナの大きな株も発見。
花盛りの頃にお会いしたかったワ、などと嘆いてみたり。
ふと眼下を見渡すと、母島のメイン街である沖港(左)が一望できました。
まぁ、メイン街も何もここしかないんですけどね。
近くでは、テリハハマボウ(右)があって、遠くに1花だけ咲いていてくれました。
シマギョクシンカ(左)も立派な株があり、ここにオガサワラシジミが飛来するような
ことがあれば絵になるのになぁとしばし夢想。かなわぬ夢ですが。
しかし、ふとみるとその花の下にはグリーンアノール(右)が隠れていたのでした。
いやぁ、こいつは厳しい環境です。そりゃ数も減りますわな。
さらに歩いていくと、湿った岸壁があって、シマゴショウがたくさんありました。
地味なんですが、貴重種で、これでも一応花が咲いてる状態なんですよ〜。
近くにはヒバゴケ?(左)やら、コウザキシダ(右)やらもありました。
よく考えると、他の場所ではこんな感じの水の染み出すような崖には遭遇
しませんでしたから、貴重な空間なのかもしれませんね。
一面にユノミネシダ(左)が群生していたり、別の場所では一面にタマシダ(右)が
群生していたりといった極端な場所もありました。面白いけどまたなんで?
一面に広がる緑の絨毯は見ごたえがあって見事ではありますが。
かわいい白い花をつけたカッコウアザミ(左)にも会えました。
近くにあったタコノキ(右)は、実がことごとく切断されていて独特な雰囲気に。
オガサワラオオコウモリの食べ跡ということですかね?
このあたりでは、ムニンテイカカズラもけっこう咲き残っていました。
後で調べると、今ではオキナワテイカカズラと同種となっているんですねぇ。
でもせっかくだからこの名前で押し通してしまおう♪
お見事だったのは、ものすごい大株がいくらでも着生していたヒノキバヤドリギ。
内地ではなかなか見れない南方系のヤドリギです。
いままではヒョロッと小さな株がついてるのは見たことがあったのですが、
ここの場所は、寄生されてるほうは大変だろうなぁと同情するほどの勢いでした。
やがて、道は林の中にもぐりこみ、薄暗い道をひたすら歩くことに。
すると、懐かしきシマホルトノキ(左)の大株に出逢いました。
いわゆるコブノキですね。板根がすごいでしょ?
近くには、第二次世界大戦の遺物(右)もありました。高射砲の跡なのかな?
そうこうするうちに、今度も結構短時間で下山終了。所要時間は1時間半かな?
(帰路のほうが長いのは、コースが1.5倍くらい長いからです)
というわけで、思ったよりも早く降りれたので、近くの別の登山道にも突撃☆
すると、初手からチクセツラン(左)がありました。嗚呼、花の頃に会いたかったよ。
シマギョクシンカ(右)も大満開の株がけっこうありました。でも虫はいないのよね〜。
結構驚いたのは、道端で見つけた憧れのオガサワラコウシラン。
到底お会いすることなんてできないもんだと思っていましたが、何箇所かで
見ることができました。花の頃にもう一度来たい!
…う〜ん、でもこの花も、職場と引き換えじゃなきゃ見に来れないんだよなぁ(笑
いきなり足元から、カニの仲間が登場してビックリという一幕も。
帰ってから調べると、カクレイワガニというやつだそうで、高知以南に分布と
あって二度ビックリ。こいつは、小笠原では明らかに一番出会いの多いカニですが、
小笠原以外でも見れるなんて想像もしてませんでした。
さらにズンガズンガと進んでいくと、うれしいことに花芽のついたオオバシマムラサキ
にも出逢えました。うぉっしゃ!ようやくこいつに出会えた!
ということでしばしオガサワラシジミが飛来しないか待ちますが、風が強くて
とてもじゃないけど期待薄。幼虫がいないかなぁと探してみるも空振り。
やはりそうそう簡単にはいかないようですね。とほほ。
近くでは、マルハチの倒木(左)がありました。この模様が「○に八」だから
というだけの理由で、マルハチと名付けた人はえらく勇気があると思います(笑
セイロンベンケイソウ(右)のものすごい大群落にも出会えました。
下ってくると、ここでも大発見がありました。巨大なマツバラン(左)です。
内地じゃ超希少種なのに、こ〜〜〜〜んな大株なんて凄すぎる!
よくみると、一応ソーラス(右)もついていました。いやはや、眼福眼福。
山を降りてさらに走り回ると、道端でカクレイワガニに再会。
ものすごいいきおいで威嚇してましたが、なんちゅうか元気あるねぇ。
しかし、色合いといい、なかなか美麗種です。オカヤドカリみたいに人気出るかも。
うろうろすると、咲き始めのムニンヒメツバキにも会えました。
本当にようやくほどけたんですよ、という感じでパラパラと花が咲いている雰囲気
でしたが、この調子だともうしばらくして満開になると見事だろうなぁ。
実はこのあたりの山道はトラツグミ(左)がえらく多いんですが、警戒心も強くてすぐ飛ぶので
見かけるのは常に一直線に飛び去る後ろ姿ばかりでようやく1枚撮れた感じ。
これもものすごい不思議だったんですが、かつて母島に来た時はトラツグミは少なかった
んですけど、バカみたいにのろく、スクーターで走っていたら、前を走っていた車の
下からトラツグミがひょっこり出現してど肝を抜かされたことが2度もありました。
つまり、車が真上を通過しても逃げないほどのボケッぷりだったわけですが、
この10年間の間に君達の中にいったいどんな変化がおきたというんだい?
んで、その後とっぷりと日も暮れたので、ヘロヘロになりつつ宿へ。
適当に買い込んだパスタなぞ茹でて飯にしつつ、同宿になってた女性と
四方山話をしていて「実は蝶を見にきたんですよ」と言うと、
「え〜そうなんだ。今日ね、オガサワラシジミの会というステッカー貼った人と会って
随分小笠原に来てるけど、シジミ汁なんて食べたことないです、っていったら
そっちじゃなくて蝶の方なんですヨ、といわれたトコなの。
そんなのいるんだ、と思ってたけど、それを見にワザワザ来る人がいるんだ〜。」
などとえらく感心されてしまったり。そですね、普通はそうなんですよね〜。
さて、その夜も懲りずに海辺をウロウロ。
灯火の下は昨日以上に虫影少なく、コガタツマキリヨトウ(左)がいただけ。
宿の入り口でフタモンウバタマコメツキ(右)を拾ったのはビックリでしたが、
これはいずれも広域分布種。なんだかなぁ。
海岸では、オオバナコマツヨイグサ(左)がいい雰囲気に咲いていました。
さらにうろうろしていると、「お〜い、ちょっと助けてくださぁい」との声。
振り向くと、巨大なアオリイカ(右)を釣り上げた方が、上げきれずに砂浜までひっぱって
きていたのでした。これ、マジででかかったッスよ〜。
刺身にしたらうまそうですなぁ。お裾分けしてもらえばよかった。
海岸ではそこここでコオロギ系の声がしているのですが、いくら探せど姿は見つからず。
かなり探しまくった後で、ふいに気付きました。この声、敷石の隙間からだ。
というわけで、覗き込む(左)と、そこにいたのはカマドコオロギ。
その後で、なんとか追い出して表でも撮影(右)することに成功しました。
カマドコオロギが野外で生活してるというのは南国ということですよね〜。
ちなみに、カネタタキ系の声もしていたけど、こちらは見つけられず。
街中の石の下をさぐると、さっそく登場したのはオガサワラゴキブリ幼虫(左)。
後ろ半分艶消しという色合いが特徴ですが、独特ですね。
今回は残念ながら成虫には会えませんでしたが、ま、こいつは沖縄にもいるし。
小さなオガサワラヤモリ(右)もひっそり潜んでいました。
気になったのは、極小サイズの陸貝類。
カタマイマイ類の幼貝?(左)もありましたが、多かったのはキセルガイ系の貝(右)。
なんかこれまた面白い色合いしてるんですが、いったいナニモノだろう?
この日も、オオヒキガエル(左)は相変わらずお元気でした。
宿に帰ると、ここでもカマドコオロギ(右)を発見。かなり個体数は多いご様子。
けっこうヘロヘロになったので、さて寝るか、と思って窓を見ると怪しい影(左)。
あわてて外に廻ってみると、お腹の中に卵を2つ抱えたホオグロヤモリ(右)なのでした。
喜び勇んでバシバシ撮りましたが、いや、体の割に卵でかいねぇ。
これじゃお産の時はさぞかしたいへんでしょうな、などと同情してみたり。
んで、部屋に戻ってビールをグイと空けて、あとは気絶するように眠り込んだのでした。
というわけで、我ながら本当に全力疾走な一日でした。
結局、結論としては、オガサワラシジミは相当難しいぞ〜!という圧倒的事実を
ひたすら肌で実感しつづけた感じだったのがさみしいトコですが。
それでも、憧れの花なんかも含めたいろんな植物に出逢えたり、珍鳥を含めて
いろんな鳥や生き物に出会えたのは嬉しい限り。
ムチャでもなんでもとりあえず来た甲斐はあったような。
学生時代よりも着実に修行を積んだ自分にも気付けましたし(笑)、
歩くほどに、いくつもの懐かしい思い出を思い出せて
過ぎ去りしよき時代に思いをはせることができたのも成果かもしれませぬ。
さてはて、翌日は島でフルに24時間使える最後の日。
天気予報的にもラストチャンスの可能性が大です。さらに全力疾走でいくゼ!