発端は実に簡単なことでした。恐ろしいくらいヒマだったんです。
数年ぶりの実家暮らしの中での正月は、いままでのようになんとか
時間を捻出して帰省していた時間の流れとは全く違っていて
クモの空巣のように全身にまとわりつく、「何もない時間」にほとほと飽きて、
だから、とりあえず、無目的な旅に出てみました。
本当は意味もなく南へ、と思っていたのですが、
ちょうど名古屋の愚妹のところにソファーを届けるという任務が発生し、
親から愚妹への大量の贈り物も積み込んで、実家を発ったのは4日の夜9時。
名古屋には夜中2時に到着し、翌日愚妹孝行をしてから、旅路に出たわけです。
1月4日 |
ということで、とりあえず、出発直前の愚妹孝行から。
ここがかなり有名な味噌カツの名店「矢場とん」。
名物の「わらじとんかつ」を食べ、超満腹での旅路のはじめ。
名古屋を発ったのは夕方4時ごろ。
目指すは一路、南、南と「本州最南端の地」、和歌山県串本町の潮岬へ。
距離は350kmチョイで、神戸〜名古屋間ほど。それならば高速で3時間弱。
ということで気楽に考えていたら、途中からは全く高速がなく、なんと現地到着は夜10時過ぎ。
6時間の長旅となったわけです。無計画バンザイ。
とりあえず、寒風吹く中、酒を呑み、満天の星の下、ギターを弾いて歌ってみました。
ちょっと青春話風ですが、とにかく気持ちよかった。ものすごくリフレッシュした時間でした。
1月5日 |
例のごとく車中泊なので、さすがにこの季節寒くてきちんと寝れないうちに
ゆっくり白んできた空の色に惹かれて外へ。本州最南端の証拠写真もゲット。
ゆっくりと空が赤く染まり、海辺の岩場も鮮やかな色に染まっていきます。
待つほどに堂々と姿を表わした、最南端の地の日の出。
水平線上に雲があったのが残念ですが、ステキな光景でした。
感動しているスキにあっという間に日は高く上り、空は大快晴。さすが南の地、メチャ暖か。
さすがは南の地、新年早々でもけっこう花が咲いていてしばらくはフラワーウォッチングを
楽しみました。左はツワブキ、右はハマアザミ。どちらも海岸性の植物です。
一面に咲いていたスイセンの花と、まだ咲いていたノコンギク。
ハマナデシコ(左)も一花だけ残っていたし、タチツボスミレ(右)も咲いていました。
こちらは比較的珍品。イソギク(左)とアゼトウナ(右)。いずれも晩秋に海辺に
咲く菊の仲間で、自然のよく場所にしか見られません。
のんびり歩いていると、目の前にウグイスが現れました。
海岸も楽しい生物がたくさん。左はカメノテという不思議な名前の生きもの。
近くの家にはオオタニワタリ(左)もありました。右はかわいいコバノタツナミ。
海岸を歩いているうちに道に迷ってしまい、灯台の真下に着いたので崖をよじ上って
中に入ると、門を空けにきた係員の人に腰を抜かさんばかりに驚かれてしまいました。
「どこから入ったの!?」。ステキな眺めでしたが恥ずかしかった…
串本観光センタ−というところで念願を一つ叶えました。名物「めはり寿司」。
高菜でくるんだおにぎりみたいなもんですが、食べてみたかったんです。
少し移動して、ちかくの港でしばらく海中を眺めていました。
さすが南の地、極彩色の熱帯魚系がいるんです。タモ網持って来るんだった…
というわけで港の岸壁でみかけたビックリたち。
左はサクラダイ、右はツノダシ。珊瑚礁で会いそうな雰囲気でしょ?
お次はかわいいチョウチョウオの仲間、チョウハン(左)と、
悠々と泳いでいたハリセンボン(右)
余談ですが、ワタクシ来年、ハリセンボン呑まなきゃいかんのですよ、ハイ。
その後、時間が空いたので有名な「那智の滝」を見に行きました。
落差133mという壮大な滝。いや、マジ、すごかったですよぉ。
左は隣接する三重の塔と那智の大滝。
右は隣接する別のお寺の屋根にあった、気恥ずかしいくらい総天然色の飾り。
これを理解する人はドマニアですが、那智の滝といえば、シダマニアにはたまらない珍品のシダが
ある場所で私の目的もそちら。左がナチクジャク、右がナチシダです。マニアですいません。
一通り山を歩いてから、杉並木を抜けて滝の近くまで行ってみました。すごいスケールに絶句。
林の暗さとのコントラストが強すぎてあまりきちんとした写真が取れなかったのが残念でした。
その後、さらに串本に戻り、楽しみにしていた「海中公園」に。
と、なんと台風23号で壊れて修繕中とのことで大ショック。
でもせっかくなので水族館で楽しみました。
なかなか展示の充実した水族館でした。
左はユゴイ、右はカゴカキダイの群れ。
ナポレオンフィッシュもいたのですが、うまく被写体になってくれません。
右はどこで撮っても写真栄えのするハナミノカサゴ。
けっこう気に入ったのがこいつら。
左がセミホウボウ、右がネズミゴチ。なかなかユニークでしょ?
魚以外の展示も充実してました。
左が不思議な長い目のすてきなメナガガザミ。右はカラフルなスナイソギンチャク。
ホラガイ(左)や、アカウミガメ(右)などにも会えて大興奮。
ふと気付くと他の客どころか係員もいなくなっていて、あわてて出口に行くと、
土産屋の店員が「まだ誰かいたんですか」と呆れながら鍵を開けてくれました。
すでに時は夕刻。海を見ると遥かなたに、また一つの壮大なドラマが幕開け
しようとしているところでした。しばらく呆然と眺めていた雄大な夕暮れ。
やがて夕陽が沈みきったあと、びっくりするほど濃いピンクの雲がしばらく水平線に残り、
空の反対側がとても鮮やかなブルーに染まって、心の底からため息がでました。
ふと我に返ると、時はすでに夕方5時半近く。我が家はここから北に再び約350km。
カーナビのご宣託では到着は6時間後。大慌てで車をブッ飛ばし、家路へ。
正月最後の逃亡旅が完結したのは夜中11時半でした。
しかし、名古屋までの旅路も含めれば約1000km。
直線距離なら東京往復ほどの距離を移動したわけで…
ちょいと欲張りすぎて、全体力&精神力を使い切った旅でしたが、
逆にチョイ疲れていた、心の方をリフレッシュできたと思います。
新年早々、心底リフレッシュできるステキな旅でした。
こんなフラリ旅、わるくないですよ?